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朝のカフェイン摂取は高脂肪食による体重増加を抑制するが、夜間(非活動期)のカフェイン摂取は、体内時計を夜型化する

Caffeine suppresses high-fat diet-induced body weight gain in mice 
depending on feeding timing 
Atsushi Haraguchi et al

この論文は、カフェイン摂取のタイミングが高脂肪食誘発の体重増加に及ぼす影響について検討した研究です。

主な結果は以下の通りです。

・ICRマウスに高脂肪食を与えた場合、カフェインを活動期の始め(朝食時)に摂取させると体重増加が抑制されたが、活動期の終わり(夕食時)の摂取では抑制されなかった。

・時計遺伝子変異マウスでは、カフェインの摂取タイミングによる体重増加抑制効果の差は見られなかった。

・カフェインの朝食時摂取は、肝臓の時計遺伝子のリズム性を改善し、脂質代謝を向上させ、血清脂質レベルを低下させることで、体重増加を抑制していることが示唆された。以上から、カフェインの摂取タイミングは高脂肪食誘発性肥満の抑制効果に影響し、朝食時の摂取が最も抑制効果が高いことが示された。

 

 Effects of caffeine on circadian phase, amplitude and period evaluated in cells in vitro and peripheral organs in vivo in PER2::LUCIFERASE miceBr.J Pharmacol.2014 Dec;171(24):5858-69. Narishige S et al

この論文は、カフェイン摂取のタイミングが高脂肪食誘発の体重増加に及ぼす影響について検討した研究です。マウスを用いた実験では、培養細胞や末梢臓器の生物発光リズムをモニタリングし、カフェインが生物時計の周期長、振幅、位相に及ぼす影響を調べています。要約すると以下の通りです。

・培養細胞では、カフェインにより周期が長くなり、振幅が大きくなった

・末梢臓器の生物発光リズムは、カフェイン投与時期によって位相が進む場合と遅れる場合があった ・マウスの自由行動リズムへの影響は見られなかった

・カフェインの影響には、cAMP/Ca2+シグナル伝達が関与している可能性が示唆された以上から、飲食物とともにカフェインを摂取することが、末梢臓器時計のリセットを助ける可能性があると結論づけています。

 

Effects of caffeine on the human circadian clock in vivo and in 
vitro Sci Transl Med. 2015 September 16; 7(305): 305ra146
Tina M. Burke et al

この論文は、カフェインが人間の体内時計に影響を与えることを示したものです。

人間を対象にした実験では、就寝の3時間前にダブルエスプレッソと同等のカフェイン量を摂取すると、メラトニンの分泌リズムが約40分遅れることが示されました。これは3時間の夕方の強光(約3000ルクス; 約7ワット/m2)に当てられた場合光による位相遅れの約半分の大きさでした。

次に、培養細胞を用いた実験では、カフェインを長期間曝露することで、細胞内時計の周期が長くなることが示されました。これは主にアデノシン受容体とcAMPを介した経路に依存していることもわかりました。

以上から、カフェインが人間の体内時計に影響を与えることが実証されたと結論付けています。これは世界で最も広く消費されている精神活性薬であるカフェインが、人間の生理機能にどのように影響するかを新たに示したものだと述べています。

 

これらの論文から朝のカフェイン摂取は高脂肪食による体重増加を抑制する可能性や、非活動期(夜間)のカフェイン摂取は、体内時計を夜型化する可能性が示唆されます。