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カルシウム吸収は夕方がよく、イヌリンなどの水溶性食物繊維はそれを促進する

Effect of circadian clock and claudin regulations on inulin-
induced calcium absorption in the mouse intestinal tract
Kazuto SHIGA et al Bioscience of Microbiota, Food and Health Vol. 42 (2), 114–123, 2023

この論文は、腸管におけるカルシウム吸収について、体内時計とクローディン(claudin)の調節が影響していることを報告しています。

マウスを用いた実験で、空腹時間と食事内容の違いにより、カルシウム排泄量に日内変動が見られたことから、体内時計が腸管のカルシウム吸収に影響していることが示唆されました。また、不溶性食物繊維よりもイヌリン等の水溶性食物繊維を摂取した方が、睡眠開始時刻にカルシウム吸収が促進されることがわかりました。

このメカニズムとして、腸管に存在するカルシウム透過性を上昇させるクローディン2の発現量に日内リズムがあり、イヌリン摂取でさらに上昇することが関与している可能性が示されました。

以上から、マウスにおける腸管カルシウム吸収は体内時計とクローディンの調節を受けており、イヌリンの摂取は睡眠開始時刻が最も吸収促進効果が高いことが明らかになりました。

クローディンとは、腸管上皮細胞の間に存在する緊密接合に関わるタンパク質です。

腸管上皮細胞の間には「緊密接合」と呼ばれる細胞間隙間があり、そこを物質が通過する「パラセルラー経路」によっても腸管への物質移動が行われています。

このパラセルラー経路に存在する膜タンパク質がクローディンです。特にクローディン2や15はカルシウムなどの陽イオンを選択的に通過させる性質があることが知られているため、これらの発現量が多いほど腸管上皮を通過するカルシウム量が増えると考えられています。

したがって、この研究ではイヌリンによってクローディン2の発現が上昇し、結果として腸管でのカルシウム吸収が促進されたことが示唆された、ということです。

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